脳神経内科について
◆脳神経内科とは
脳や脊髄、そこから出て全身に張り巡らされている末梢の神経、さらに末梢の神経に支配される筋肉の病気を内科的に診察する科です。
外科ではないので、原則的には手術は行ないません。精神科や神経科、あるいは心療内科は精神、心の病気を診る科で、脳神経内科とは少し異なります。
脳神経内科で診察する病気としては、脳の血管がつまる脳梗塞(脳の血管が破れる脳出血は主に脳神経外科)、脳の神経細胞が衰えて認知機能が低下する認知症(一番多い原因はアルツハイマー型認知症)、手が振るえたり動作が遅くなるパーキンソン病、筋肉を支配する神経細胞が次第に衰えていく筋萎縮性側索硬化症、様々な原因で起こる頭痛(良くある頭痛は緊張型頭痛や片頭痛)、てんかんがあります。
その他,脳炎や髄膜炎、さらに筋ジストロフィーなどの筋疾患も守備範囲です。
症状としては、意識障害、呂律が回りにくい、手足に力が入りにくい、手足がしびれる、頭痛、もの忘れ、動作が遅い、手足が振るえる、歩きにくい、めまい、しびれなどさまざまです。
脳神経内科の病気の診断には、話を良く聞く、いわゆる問診が重要です。
また診察では、血圧測定や胸・腹部の診察などの一般的な内科的な診察に加え、頭のてっぺんから足先まで詳しく診察する神経診察を行います。
その上で、一般的な血液検査、脳CTや脳MRIなどの画像検査、脳血流シンチやMIBG心筋シンチなどの特殊な画像検査、脳波、神経伝導検査、筋電図などの神経生理学的検査などの補助検査を駆使して診断の精度をあげます。
脳神経内科領域における治療の進歩には目覚ましいものがあります。
脳梗塞は発症4時間30分以内に血栓溶解療法(血栓を溶かす薬を点滴静注します)を行うと血栓が解けて麻痺が良くなります。
アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症では脳内のアセチルコリンを増やす薬を使うと、ある程度症状を改善する事が出来ますし、パーキンソン病の場合にはさまざまな薬剤が開発されており、症状の改善がかなり期待できます。
片頭痛やてんかんの薬も新しいものが次々と開発されており、症状がほとんどなくなります。
◆神経診察(神経学的検査)について
医療行為は大きく4つに分けることができます。
問診、診察、検査、治療(投薬や手術など)です。
このうち、脳神経内科の医師が他の診療科の医師と大きく異なるのは、「神経診察」を行うことです。
例えば、お腹が痛くなれば内科の先生にお腹を診てもらいますし、膝が痛くなったら整形外科の先生に膝の診察をしてもらいます。
一方、頭痛で脳神経内科にかかると「神経診察」をうけますが、診察は眼から始まり両手足の動きや感覚まで全身に及びます。
なぜかというと、脳は全身に張り巡らされた末梢の神経を介して体のすべてをコントロールしているので、逆に全身を診察することにより、脳に問題があるかどうか、あるとすれば脳のどのあたりに問題があるのかがわかるのです。
時間をかけて「神経診察」を行うことにより、症状を起こす病気の種類、脳の病変部位を推測することができ、必要な検査、必ずしも必要でない検査がわかります。
脳神経内科専門医とは、この「神経診察」の手技を会得した専門医なのです。